チャーリー軽木の妻の記録(パンフレットに寄せたコメント)
そうよマイケル、これがチャーリーに教えてもらった東洋の国の神秘の料理、「ヤミナベ」です。
この鍋に入れて煮るだけで何でも美味しく食べられるのよ。
あらシンディ、今日は「小さなベス」は一緒じゃないの?
今度おばさんがベスのお洋服を縫ってあげるわね。可愛いワンピース。
ほら、あなたも早く来なさい。マイケルもアビーもシンディも席に着いてるわよ。
あなたはお父さんの代わりに我が家の代表としてこの「ヤミナベ」に参加してるんですからね。
そこでふんぞり返ってないで…早く!前髪引っこ抜くわよ。
…ようし、じゃあ皆良い?蓋あけるわよ。
うん、なんか。微妙な匂いね。アビーが飼ってるマディのお腹みたいな匂いがするわ。
ん?ああマイキー、マディっていうのは大型の泥ガメよ。
アビーが飼っていて…アビー、もしかしてこの中にマディ入れた?入れてない?
あそう、じゃなんでこんな匂いに…まあ良いわ、大丈夫。「微妙」はあの国の美徳なのよ。
チャーリーもお芝居の演出をする時その微妙なニュアンスを出すのに苦労してるって言ってるし。
じゃあ、皆が何入れたのか見て行きましょう。
ええと、この茶色いツブツブは何かな?え?ジェリービーンズ
アビー、あなたジェリービーンズを鍋に入れたの?
…うん、オーケーオーケー、豆みたいなものよ。ビーンズだし。
じゃこの黄色のペラペラなに?マイケルが入れたの?…ああポテトチップね。の、袋。
…袋?袋ってもう食べ物じゃないわよね。え?袋についてたくじがはずれてたから?
…まあ…いいわ。塩味がついて。それにね、供養だと思えば…
「供養」よ。お父さんが言ってたでしょ、あの国の人は身の回りの物を燃やしたりして
感謝するんだって。長く使った物やお気に入りの物には魂がやどると考えるんですって。
だから燃やす事で、魂が安らかに天上に昇れるようにするんですって。
すばらしいと思わない?まあポテチの袋じゃ魂はないと思うけど。
どうしたのシンディ。何?どうして鍋を指差して泣いてるの?誰が供養されちゃってるって?
ん…これ…お肉じゃないわよね。あ。…ああ、「小さなベス」!なんでベス入れちゃったの?
好きな物入れてって言ったけど、お人形入れる事ないでしょ。
…よく煮えちゃったわね。ちょっと綿も出ちゃって、色もどす黒くなっちゃった。
まあでもほら、ベスは南の島にバカンスに行って、日焼けしたんだと…思えないわね。
ああ泣かないでシンディ。え?あなたが入れたんじゃないの?じゃ誰…?
あら?アビー、うちの息子知らない?え?なんであんなとこ走ってんの?
あ!あいつが犯人ね。こらっ!待ちなさ~いっ!
自宅の庭にて
チャーリーの妻