〜Mama-チャリカルキ vol.4「宿堂さんの見たイリュージョン」
「今夜、此野岸さんが待つ店で」「コノギシさんの不思議なランプ」より〜
「わかった。ケチャップを探してるんでしょ?」
「え?そうよ。」
「その子の頭に付けるための?」
「ええ。だってどこの子かわからないけど、今夜のお祭りの仮装にしては地味なんだもの」
「ゾンビの仮装で現れたその子に、もっと迫力を付けてあげようと思って、
今台所であなたはケチャップを探してる。そういうことね。」
「そのとおりよ。」
「今のあなたの格好は、ステテコに腹巻、頬被りに風呂敷しょった『ドロボー』の扮装。違う?」
「そう。今夜はみんなが仮装するお祭りなのよ。でもなぜわかるの?」
「毎年のお祭りのときに自分がどんな仮装したかぐらい覚えてるわよ」
「ああ!じゃあやっぱりあなたは、あたしなのね」
「そうみたいね。どういうわけか知らないけど、あたしが家に電話しようとしたら、
昔の我が家につながっちゃって、しかも過去のあたし本人が出ちゃったって事ね。」
「不思議なこともあるわねえ。」
「そうね」
「ねえ、未来のあたしは…あなたのことだけど、何で家に電話しようとしたの?」
「あのいたずら小僧がちゃんと留守番してるか気になったの」
「あいつか。我がいたずら息子は未来でも悪さばっかりしてる?」
「当然。チャーリーがいないと大変よ」
「芝居の演出だからって外国に行かなくてもいいのにね」
「仕方ないわよ。それがあたし達の夫の仕事なんだもの」
「ねえ、ひとつ聞きたいんだけど。…未来でもみんな元気にしてるの?あたしたちは幸せ?」
「そんなの聞いてどうするの?いずれわかるわよ」
「…そうね。わざわざ聞くことでもないわね。」
「あ。でもその子、今ゾンビの格好で来たその子はね」
「なに?」
「…ああ、やっぱりいいわ。それもいずれわかるし。」
「そう。ところでケチャップってどこにしまったかしら?」
「シンクの上の右の棚よ」
「ああ、そうだったわね。流石あたし。」
「あたしがあたしに教えたんだから、流石と言えるかわかんないけど」
「あら?変ね?」
「なに?」
「あたしは、自分がいつか過去の自分に電話するって事、忘れちゃうのかしら?
だって覚えてたら、今のあなた…未来のあたしの事だけど、
この電話を掛けないって選択もできるでしょ。そしたらあたしはどうなるの」
「今の今までそんな事があったの忘れてたわ。だからこうして掛けてるんじゃない」
「え、これあたし忘れちゃうの?かなり衝撃的な出来事だと思うんだけど」
「ねえ、あたし。あたしがそんなややこしいこと考えると思う?
いちいち過去だの未来だの考えて生きてる?
そんな事よりケチャップをどこにしまったかを憶えておく方が」
「重要ね。」
「そう。流石あたし」
「ふふふ、そうね。」
「ふふふ」
「あ、じゃあもう切るわね。あの子待ってるだろうから」
「ええ。」
「ごきげんよう、あたし」
「ごきげんよう、あたし」
自宅にて
チャーリーの妻
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