チャーリー軽木の記録(パンフレットに寄せたコメント)

劇場公演第6弾「そして、砂名堂兄妹 山で泳ぐ」より

ったくすばらしい。
今回も頼まれてチャリカルキという劇団の演出をすることになった。
取材のために日本のある祭りに参加した私は、感動してしまった。
会場全体がキラキラと輝いている。
小さな出店がいくつも並び、可愛らしいお面や、色鮮やかな玩具を売っている。
「ユカタ」という民族衣装を身につけた少女達が笑いながら通り過ぎていく。
トウモロコシやソーセージを焼く匂い、飴に漬け込まれた林檎の匂いが、あちらこちらから流れてくる。
笛や太鼓の音、子供達の声が通りに溢れている。
「キンギョスクイ」という小魚を捕まえる遊びに興じているようだ。
私もやってみたが、一匹も捕まえられなかった。
しかし髪を染めた若者が、「ほい、残念賞~」と一匹出目金をくれた。

やがて、縁道の先から、見物客の歓声が聞こえてきた。
この祭りのメインイベントが始まったのだ。
四階建てのビルほどもある巨大な山車が、いくつもこちらに向かってくる。
山車は飾り付けられ、何十人もの人々によって引かれてくる。
山車の上にも着飾った人々が居て、賑やかに楽器を演奏している。
しずしずと、何台もの山車が通り過ぎていく。全く、夢のようだった。

「見たこともない祭りだったよ。」
祖国に帰った私は、東洋の小さな国の祭りを妻にそう話した。
「私たちの祭りも、もうすぐね。」
妻は私の話に関心を示しながらそう言った。
そうだ。私たちの街の「バナナ祭り」も、もうすぐ始まる。
全身にバナナをくくりつけ、鼻や耳にバナナを差し、バナナ型の剣でチャンバラをし、何万トンものバナナを食べて皮を誰彼かまわずぶつけ合う。
そして、滑って転ぶ。
どれだけ見事に何度も滑って転ぶかが、このバナナ祭りのテーマだ。
街全体がバナナの香りに包まれる頃、キングオブバナナが決まる。
骨折など当たり前のこの祭りで、私は二十年王座を守っている。
心が、沸き立ち始めている。
しかし、そんな私の心の隅に、あの小さな国の祭りの景色が焼き付いている。
いつか、妻にも見せてやろう。

祖国にて
チャーリー軽木

劇場公演

Mama-チャリカルキ

Mama-チャリカルキ 番外編

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